2025/05/08 13:10

こんにちは。

皆様ゴールデンウィークは、充分にリフレッシュできましたでしょうか?

私は実家へ戻りのんびりしたゴールデンウィークを過ごすことが出来ました。

社会人になってから25年以上経っていますが、今までこんなにのんびりしたゴールデンウィークを過ごしたのは初めてかもしれません。

2023年にキャリアコンサルタントの資格を取得してから、何度か労働時間にまつわる悲痛な叫びを聞いたのですが、そこで単純だと思われるかもしれませんが、「なぜ1日の勤務は8時間なんだろう」と考えるようになりました。

キャリコンで伺った話の中でも

「定時で帰れる雰囲気ではない」
「サービス残業が当たり前」
「過労で倒れた」

といったあまりにもありふれた叫びではありますが、これらの問題は根が深いなと感じています 

「1日8時間労働」という制度。

これが制定されたのは、遡ること産業革命の時代。

当時、1日に10時間から16時間もの長時間労働が常態化していました

そんな非人道的な状況を改善すべく、イギリスのロバート・オーウェンが「8時間労働、8時間休息、8時間余暇」というスローガンを掲げたのが始まりです

その後、フォード社が1914年に8時間労働制を導入し、結果として生産性が向上、利益も倍増したことで、この制度が広まっていきました

しかし、21世紀の現代。テクノロジーは目覚ましい進化を遂げ、多くの業務が効率化されたはずです。

それなのに、なぜ私たちの多くは未だに「1日8時間」という枠に縛られ、それどころか多くの人がそれ以上の「長時間労働」に苦しんでいるのでしょうか?

この「8時間労働」という“常識”こそが、実は多くのブラック企業が存続し、新たな犠牲者を生み出し続ける温床の一つになっているのではないかと、私は強く警鐘を鳴らしたいのです。


「1日8時間」神話がブラック企業を育む


法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められています

これを超える労働には36協定の締結が必要であり、原則として時間外労働の上限は月45時間、年360時間とされています 。(ただし特別条項を締結すれば月100時間未満の残業も可能となっています。)

しかし、実態はどうでしょうか?

  • 常態化する長時間労働・サービス残業 「定時退社は悪」という風潮や、タイムカード打刻後の「隠れ残業」が横行している企業は後を絶ちません 。Job総研の調査では、ブラック企業経験者の68.9%が「長時間労働」を理由に挙げています
  • 過労死ラインを超える現実 月45時間を超える残業が続けばブラック企業の可能性があり 、月80時間超の残業は「過労死ライン」と呼ばれ、心身の健康を著しく害する危険な水準です 。実際に、長時間労働が原因で心身を病み、適応障害と診断されたり 、最悪の場合、過労死に至るケースも報告されています
  • 生産性の低下という矛盾 「長く働くことが美徳」という古い価値観に囚われ、非効率な働き方を長時間労働でカバーしようとする企業文化も根強く残っています 。しかし、研究によれば人間の集中力には限界があり、適切な休息なしに長時間働いても生産性はむしろ低下します


なぜ日本では労働時間が減らないのか?根深い構造的問題


では、なぜ日本ではこれほどまでに労働時間が減らないのでしょうか?そこには、日本特有の構造的な問題が複雑に絡み合っています。

  1. 深刻な人手不足と業務過多 少子高齢化による生産年齢人口の減少は深刻で、多くの企業が恒常的な人手不足に陥っています 。結果として、一人ひとりの業務負担が増加し、長時間労働をせざるを得ない状況が生まれています
  2. 企業・経営層の意識の低さ 未だに「社員を長時間働かせること=利益」と考える経営者や、残業を前提とした働き方を改めようとしない管理職が少なくありません 。働き方改革が叫ばれても、実質的な業務量削減や人員増強が行われず、単に残業時間の上限規制だけが課され、結果的にサービス残業が増えるという本末転倒な事態も起きています。
  3. 従業員側の問題意識と諦め
  • 残業代への依存 生活給として残業代をあてにせざるを得ない状況
  • 同調圧力と評価への不安 周囲が残業していると帰りづらい雰囲気や、「残業しないと評価が下がるのではないか」という不安感が、自主的な長時間労働を助長しています
  • 諦めの蔓延: 「相談しても無駄」という諦めから、ブラックな労働環境に声を上げられないケースも多いのが実情です
  1. 非効率な業務プロセスと低い生産性
  • 旧態依然とした業務の進め方 IT化や業務改善が進まず、非効率な手作業やアナログな業務プロセスが残存している企業が散見されます
  • 無駄な会議の多さ 目的が不明瞭な会議や、必要以上の参加者を集めた長時間の会議が日常業務を圧迫しているという声も聞かれます 。日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟国の中でも低い水準にあり、この低生産性を長時間労働で補おうとする悪循環に陥っているのです


「8時間労働」からの解放と、真の働き方改革へ


この「1日8時間」という固定観念に縛られ続ける限り、ブラック企業はなくなりません。

私たちは、もっと柔軟で、人間らしい働き方を追求すべきです。

テクノロジーの進化は、労働時間短縮の追い風になるはずです。 

AIやRPAなどの技術を活用すれば、定型業務の自動化や効率化は格段に進み、人間はより創造的な仕事に集中できるようになります。

実際に、Microsoft Japanが週休3日制(週4日勤務)を試験導入したところ、生産性が約40%向上したというデータもあります

しかし、テクノロジーだけでは解決しません。

最も重要なのは、経営者、そして私たち働く側一人ひとりの意識改革です

  • 経営者の方へ「社員の健康と幸福こそが、企業の持続的な成長の源泉である」という認識を持つこと。長時間労働を是とせず、生産性向上と労働時間短縮を両立させるための具体的な投資(ITツール導入、人員配置の見直し、研修など)を断行することが大切だと考えます。少ない時間で最大限の効果が出るほうがコスパがいいと思いませんか?
  • 働く私たちへ「自分は大丈夫」と思わず、おかしいことには「おかしい」と声を上げることが大切です。サービス残業を拒否し、有給休暇をしっかりと取得すること 。そして、より良い労働環境を求めて行動すること。

長時間労働が常態化した企業では、社員が疲弊し、離職率が上昇します 。これは企業にとっても大きな損失であり、社会全体で見ても大きな問題です。


未来の働き方は、私たちの手で創る


「1日8時間労働」は、かつて労働者を守るための画期的な制度でした。しかし、時代は変わりました。

今こそ、この「常識」を疑い、生産性と幸福度が両立する、真に人間らしい働き方へと舵を切るべき時です。

俗にいうブラック企業や最低限度の法律ギリギリのラインで就業規則を定めているような隠れブラック企業をこの世から根絶するために。

それは、経営者も従業員も含め、誰もが心身ともに健康で、やりがいを持って働ける社会を実現するためには必要なことです。

まずは「なぜ1日の労働時間は8時間から減らないのか?」という当たり前に疑問を持ち、私たち一人ひとりが真剣に考え、行動していくことが不可欠です。

あなたの職場は、本当に「8時間」で終わっていますか?